診察-4

ゴールはあるのだろうか?それが男にとっての一番の気がかりだった。今という通過点をいったい幾つ過ぎればそのゴールにはたどり着けるというのか。いや、そもそもゴールなどがあるのだろうか?・・とてつもないところに来てしまったのかもしれないと男は恐怖を覚える。しかし、足もとしか見えないとはいったが、逆に言えば足もとだけはあるのだ。そこにとりあえず立っているだけでもいいではないか?と、男は思う。
そういった考えを医者の前でつたなく話してみた。
牛乳瓶のフタのように見えたその担当医の眼鏡の奥がだんだん見えるようになってきたのを男は感じた。
・・それはあなたのひとつの進歩ですよ。そういった気付きは良い事です。
最近、そういえば少しずつながく眠れるようになった気がします。しかし、あのセンター駅ではじめるはずだった場所がなくなり、それまでずっと仕事をともにしてきた仲間を退社に追い込んだことが、やはり、苦しい。
男はそう話すしかなかった。それだけが理由ではないとしても、分かりやすい話しではあるはずだ。そう男は暗く考える。そのさきにしか進む道はない様な気が男にはした。
・・薬は前回と同じように処方します。また来月に。