大統領はもうニホンにいない

散歩をするのは好きだ。昼頃ようやくベッドから起きだし、朝昼兼帯の食事をし、散歩に出るのはきまって午後の遅い時間。その日課はほぼ守られ、この空白の時間を埋める唯一の持続性のある行為だったと思う。夜にずれ込むこともあり、それはそれで悪くなかった。今日も夜の散歩となった。幸福な時間がそこには保証されているべきだった。しかし今夜のそれは違うものになった。ちょうど自宅へ続く街道に沿うようにして、一見、飛行機雲のように見える「それ」が東西に長く、どこまでも現れていた。しかもちょうど自宅近くの上空でX字のように交わり、しかもその先で大きく二方に枝分かれするように「それ」の筋はつながり合わせて五方向に夜空に横たわっていた。2009年11月15日。千葉県A市上空。午後8時30分。それは確かに大統領がいるときには出来ることではなかったろう。