2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

止まり木

スペイン語のメニューをみて上の行から順番に頼むことにする。丸の内に近い映画館のはす向かいにひっそりと看板を掲げていた居酒屋。店の半分はビールを立ち飲みをする外国人で占められていたが壁際にうまく空席があった。近況でもなく家族のことでもなくふ…

「男と女」

「結局紅葉を見るのじゃなくて人を見にきたようなものね」と彼女は言う。なぜか地下鉄で夕暮れの銀座まできたのだった。帰りの時間は大丈夫なのか先ほどから尋ねるのはこっちの役目になっていた。彼女はその都度何も答えずにいる。街灯に灯がともり先ほどの…

珈琲屋

中央線の架線故障でダイヤは大幅に乱れているらしい。暗くなる前に帰りたい彼女との奥多摩行きは諦めるしかなかった。自然と歩く先は以前(それこそ何時だったかは覚えていられないくらいの以前だが)にふたりで待ち合わせにつかった「珈琲屋」に向けられた…

向こうから駈けてきた

都内でも有数の大きなターミナルのあるその駅は週末の約束をした男女と家族連れや様々な年齢構成のグループでごった返していた。11月に入ったというのに上着を着ていると汗ばむような陽気の昼過ぎに約束の時間を大幅に遅れてその雑踏の中から突然彼女は現れ…

大統領はもうニホンにいない

散歩をするのは好きだ。昼頃ようやくベッドから起きだし、朝昼兼帯の食事をし、散歩に出るのはきまって午後の遅い時間。その日課はほぼ守られ、この空白の時間を埋める唯一の持続性のある行為だったと思う。夜にずれ込むこともあり、それはそれで悪くなかっ…

11月7日

長い夢を見ていたようだった。百あまりの夜に百あまりの朝。「人生に意味はない。あるとすればそれば無意味という意味しかない」と言い、あるいは言い放っておきたかった。砂で造った城が寄せる波に簡単にさらわれるくらいの脆さで、そのような「虚勢」は崩…