診察-2

その後はどうですか・・?
ちょうど一ヶ月後に男は二度目の面会に行っていた。その担当医は相変わらず分厚い眼鏡の奥に濁ったような眼をたたえて、こちらを見ていた。
やはり、頭の中にもう一人自分がいて、自分が自分に囁きかけてくるような。
具体的には・・?
お前はどこにいるんだとか、ここはどこか分からないとか、そういった事を思います。
それは常に・・?
そうですね、そんな事を考えるもう一人の自分がいる。手を洗う時などそうやっていつまでも水道を出している。手を洗うのをやめられない。
(沈黙)
身体が震えたりしますか・・?
気がつくと手が震えていますね。
相変わらず眠れませんか・・?
(沈黙)
夜は。それで日中に眠くなる。
ノートを持っていますね・・?
これは見せようと思ってきましたけれど、見せられないです。
無理に見せる事はありません。眠れなくとも、身体を休めるように。それにあまりそのことに考えすぎないように・・
(沈黙)
また来月伺います。