流星号、応答せよ!

自らの意志を持ち、その形をうねらすように変形させながら、「ウィ、ウイン」と金属音を残してその流線型の車(実は宇宙船なのだ!)は、無線機で指令を出す少年戦士のもとへと馳せ参じる。世界は悪とその悪と戦う正義の少年とに見事に二分割されていた。もちろん僕らは正義の味方だ。
しかしあれから半世紀ちかい時間が過ぎ、さすがにその超可変性合金で出来た車体のオーバーホールも難しくなってしまった。その少年はまだ現役だったが、ここ10年来、無線機のアンテナをのばした覚えは無かった。
むかし少年と呼ばれたその男は、世界のどこかでいまでも自分が必要とされているはずなのだと、いまも流星号はすぐに飛んでくるはずだと、夢見ながらその日を終える毎日だった。

最近は世界に正義の味方が増えすぎたのかもしれない。あるいは、戦うべき悪はもうどこにもいなくなってしまったのだろうか。

むかし少年と呼ばれたその男は、そこでこう考えざるを得ない・・・世界とはどこにいったのか?と。