とうきょう、という響き
当時高校生だった少年は、黄色い電車*1に乗り継ぎ、千葉からやっと東京タワーに来ていた。そこで、いかにも「とうきょう」の(つまり都会の)匂いのする年上の女性が、思わず呟いた「東京ってきれい」というコトバに遭遇する。それを聞いた瞬間に少年はそのコトバのニュアンスを理解する。東京生まれで東京在住だからこそいえるその台詞は、少年の心を刺激し、また羨望も覚えたのだった。由美はそういってその場から立ち去り、少年は一人取り残される。その後30年の時空を超え、「世界を記述する」ことをせざるを得なくなるようになるとは、勿論、当時の少年は知る由もなかっただろう。
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- 作者: 庄司薫
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- メディア: 文庫
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